北区立中央図書館 訪問記
last visit:2008/8/8
北区立中央図書館は陸上自衛隊十条駐屯地の東、駅で言うと王子駅・十条駅・東十条駅のどこからも等距離にあたるような場所にあります。以前はもっと東、王子三丁目交差点の近くにあったのですが、2008年6月28日に今の場所に移転しました。この中央図書館は、戦前の陸軍兵器工場の一部として使われていた赤レンガの建造物を利用した建物なんです。図書館の西側が赤レンガ倉庫を生かした形になっていて、内部の鉄骨も当時のものをそのまま活かしています。私は移築前のイベントで手を加える前の赤レンガ倉庫を見学していて、この古い建物に増築して新図書館を作るというのがどういう結果になるか、期待半分、不安半分といった気持ちだったのですが、これはかなりいい建物になったように思います。愛称はずばり「赤レンガ図書館」で、これは移転前に愛称を公募していたのですが、実は私も3つ選択肢があった中からこの名前に応募しました(笑)!
中はとても広くて、一体どこから説明したらいいのかわからないくらい(笑)。図書館北側が公園になっているのですが、その公園に通じている入口から建物に入ると、右にカフェがあり、正面が図書館エリアの入口となっています。図書館エリアを入ってすぐ左に返却カウンターがあり、正面にある盗難防止ゲートをくぐると、正面にカウンター、左に新聞・雑誌コーナーとCD・DVDコーナー。その左に中庭(ここでも本を読める)があり、それを囲むように小説や家事関連本、中高生コーナー、公開書庫。カウンターの右側のエリアは、ネット閲覧PC、持参PC専用席、CD・ビデオ・DVD試聴機、一般書架、外国語図書も。右前方に進んでいくと「北区の部屋」という地域資料をあつめた部屋もあります。
2階はこども図書館で、読書テラスや広いおはなしの部屋、授乳やおむつ交換ができる部屋もあります。そして、3階には閉架書庫やホール、区民活動コーナーという部屋もありますね。もうね、とにかく広い。この広い施設を図書館と何かの複合施設ではなく、図書館だけの施設にしてくれたのが何とも贅沢で嬉しい限り!
まずは1階から。一般書架は棚が低くて、車椅子の方でも本が無理なく取りやすい高さ。私が行ったとき、実際に車椅子の方がいらっしゃったのですが、棚と棚の間も広いので、方向転換も楽にされていたようでした。棚が低いのは見た目にも開放感があるし、地震対策の点でもいいですよね。
図書分類番号で並べられた一般書架とは別に、常設コーナーもいろいろあります。「ビジネス情報コーナー」「法律情報コーナー」「教科書」「特別支援教育」「科学教育」「地球環境」「闘病記」と、注目を浴びているテーマが取り上げられていますね。「ビジネス情報コーナー」と「法律情報コーナー」は、スペースも広くて冊数も多いのですが、見出しもなくずらずら本が並んでいるので少し本が探しにくい。どちらもいろんな分野が含まれているので、コーナー内で分類して見出しをつけてくれると、もっと本が探しやすくなると思います。
教科書コーナーは、現在北区の公立小中学校で使っている教科書はもちろん、それ以外のものや、アメリカ・イギリスで使われている教科書、戦時中や戦後の教科書、そして下段には歴史教科書問題に関する本も並んでいます。ただ関連する資料を並べているだけじゃなくて、深い考察を促すコーナーになっているのが素晴らしいですね。
AV資料もCDとDVDがあります。一般資料としてのビデオはなかったけど、試聴機でビデオも見られるようになっていたので、たぶん広報ビデオがいくつかあると思います。この赤レンガ図書館に関する広報ビデオも旧中央図書館時代に見た気がするし。DVDはジャンルも様々で、一般の映画はもちろん、「北の国から」「大地の子」といったテレビドラマのDVDや児童向けDVDもあります。DVDの試聴機も5台あるので、ご自宅にDVDプレーヤーがない方も図書館内で見ることができますよ。
ネット閲覧PCは、ページ印刷(A4サイズで1部のみ。1枚10円)やダウンロードもできるんですね。但し、印刷は行政機関の広報ページや研究機関の研究成果公表ページなど、ダウンロードは「印刷の対象となるサイトで、CSV形式によるデータのダウンロードが用意されている場合」「国および地方自治体等が提供している各種手続き・申請書等の様式類」といったように、条件を満たしたページ・データに限ります。印刷・ダウンロードをしたい場合は、申込書にサイト名やページのアドレスを記入してカウンターに出せば、それを職員さんが印刷・ダウンロードするという仕組みです。ダウンロードの場合は、FD等の記録媒体を自分で用意してくる必要があります。
ネット閲覧PCがある辺りから、北区の部屋の方へと向かう途中には、個室研究室が5室あります。「学習室・読書室としてのご利用はできません。18歳以上の方が個人的な研究テーマによる調べもの等にご利用いただけます」という説明があり、各ブースにはL字型の机とネット閲覧PCが備え付けられています。1回の利用が2時間で、待っている人がいなければ1時間の延長を2回までできるとのことです。研究の部屋ですので、FDやUSBメモリで文書やデータを持ってきてここのPCで加工することも可能。但し、その際には事前にウィルスチェックを受ける必要があります。ソフトもPCに備え付けのものを利用するのみで、USBメモリにプログラムを持ってきて使用するのは禁止されています。備え付けのソフトとしては、Microsoft Office製品と解凍・圧縮ソフトの+Lhacaも入っています。自分で作った文書の印刷もできて、サイズはA4のみ、1枚10円です。このPCでネット上のデータのダウンロードをするのは禁止されているのでご注意を。
個室研究室はドアが透明なガラスなので、一般書架を行き来する利用者が多い時間帯には気になってしまうかもしれませんが、背を向けるように作業していればそんなに気にならないし、L字の角の部分にPCがあって両脇に資料等を置けるので、人によっては自分の机よりもこの個室研究室の方が作業しやすいのではないでしょうか(笑)。それに物事を深く調べていくのに、ネット上の新しい情報と書籍化されている情報と両方を同時に追うことができるこうした図書館の設備はとても便利ですね。私はまだ一度しか使ったことがありませんが、とても便利なのでこれからも利用したいと思います。
個室研究室の隣には1室だけですがグループ個室というのもあります。こちらは開館したばかりの頃は準備中で使用できない状態で、2008年8月に行ったら8月いっぱいは閲覧席として開放していました。9月になったらグループ個室として利用できるようになっているか、その頃確認してみたいと思います。
個室研究室より入口に近いあたりにPC専用席が10席ほどあるのですが、この席は電源と有線LANが使える席ということで、LANにつなげずバッテリーを使うならこの専用席に限らず全ての席で持参PCを利用していいのだそうです(これから先、苦情などがあったら変更するかもしれないとのこと)。それを可能にしているのが、机席の1人分のエリアが広いことと、館内の吸音性の高さ。この図書館に限らず、最近建てられた図書館って本当に吸音性がいいんですよね。
漫画も中高生コーナーに揃っています。これは珍しいなと思ったのが、図書館で全集を揃えている漫画といったら、やはり手塚治虫というのがよくあるパターンなのですが、北区立中央図書館は石ノ森章太郎の萬画大全集をずらっと揃えているんですよね。特に北区にゆかりがあるわけではないと思うのですが(生前住んでいてお墓もある豊島区の方がゆかりがある)、東京は隣接区の図書館へのアクセスもわりといいので、他の図書館にもあるような資料を揃えるよりこうして他にはなかなかない資料を揃えてくれる方が嬉しいですね。
中高生コーナーには、中高生がグループ学習できる部屋が2つあります。それぞれ6席用意されています。近くの学校に通う生徒さんが頻繁に利用するかもしれませんね。
公開書庫の近くには、対面朗読室やサポート室(音声読書機や録音資料再生機がある)も用意されています。こういう部屋は建物の奥の方に設置する図書館が多いと思うのですが、ここは中庭に面した明るい場所に設置してあります。目の不自由な方も、陽の光を浴びながら気分よく読書できたらいいなと思います。
北区の部屋は、北区の資料が揃っている部屋。新しい設備を備えるだけでなく、北区の歴史がわかるコーナーを大きくとっているところがこの新中央図書館のいいところだと思います。北区の部屋の手前には、この地域の昔の航空写真や移築時に取り出した部品もあるし、横や上を見渡せば赤レンガ倉庫時代の鉄骨が今もそこにある。個人的には、北区の部屋の壁に展示してあった、旧東京第一陸軍造兵廠本部(現文化センターの建物で、なかなか気品のある建物なんですよ)が白く塗られている最中の写真におぉと魅かれてしまいました(笑)。この建物は、白が断然よいです。
オープンイベントの際に訪問したときには、北区の部屋で展示物について説明してくれる職員さんがいらっしゃったのですが、軍用地が多かった北区はそれを転用した学校・団地・公園・競技場などが多いという特徴を持つ一方、転用されるまでは固定資産税が入ってこなかったという懐事情もあったという話を聞いて、へぇと思ったり。こういう話はオープンイベントに限らず、文化講座などを開催してぜひいろいろ聞かせてもらいたいところです。
また、北区の部屋とはちょうど反対側にあたる、喫茶室の脇(図書館から喫茶室が見える仕切りの手前)の展示コーナー「赤レンガの記憶」には、この中央図書館の赤レンガ部分が改築される過程の写真が展示してあって、これもなかなか面白いです。
北区立中央図書館はICタグで蔵書管理をしていて、1階カウンターの対面に自動貸出機が並んでいます。ここの自動貸出機は、東葛西図書館、豊島区中央図書館、赤坂図書館で使われているものとは少し違っていて、台の上に本を置いて読み取るタイプではなく、ブックスタンド状のものに本・CDを差して読み取る形。操作も少し違っていて、従来のICタグ自動貸出機は、利用者カードを読み取ってから借りる資料を所定の場所に置けば「○冊です」という表示が出たのですが、北区立中央図書館の自動貸出機は、利用者カードを読み取った後に、利用者自身がこれから何冊(点)貸出処理をするのかを入力する必要があります。その後にその冊(点)数に合致するまで読み取りを行うという形。
オープン時には自動貸出機の業者の方々も利用者対応に来ていたので、「従来のICタグ自動貸出機より一手間必要なんですね」という意地悪な質問をしてみたのですが(笑)、読み取り漏れを防ぐためにこの形にしたとのこと。従来のICタグ自動貸出機でも読み取り漏れはありえることで、その場合漏れたことに利用者が気が付かないと、ゲートで音が鳴って気まずい思いをすることはありますもんね。不愉快な思いをさせる可能性よりは、一手間増やす方を選んだというところでしょうか。まあ、これくらいの手間なら、別にいいか。
さて、図書館訪問記もずらずら長くなってしまったので、この辺で喫茶スペースの話に移りましょう。喫茶スペースは、手前側の飲食持込可のフリースペースと奥側の喫茶店に分かれているので、お弁当派の方も外食派の方も利用できますよ。飲み物は喫茶店で注文してもいいし、フリースペースの自販機で買ってもよくて、もちろん自販機の方が安いです(笑)。ましてや、紙コップの自販機は水が無料です。
喫茶店の方は「Atelier de Reve(アトリエ・ド・リーブ)」というお店で、こちらは白金に本店があるケーキ屋さんなんですね。公共施設の喫茶室としてはケーキの値段が少々高めな気がしますが、たぶんそういうつもりで入らなければいいんですね。街のケーキ屋さんに入るつもりで利用してください(笑)。ちなみに、私はダージリンの紅茶(単品で320円)とベイクドチーズケーキ(単品で550円)をセット(820円)で食べてきました。その他はブレンドコーヒーが280円、デザートはマンゴープリンの340円が一番安かったです。ケーキはテイクアウトもできますよ。
喫茶スペースの窓からは図書館北側の公園が見えるようになっているので、長時間の調べ物の際の休憩にはちょうどいいですね。それにこの場所なら、図書館を利用しに来たのではなく、公園に遊びに来た人も入るんだろうな。本を読むのに疲れたら、そして目を休めるためにも、この喫茶スペースで上手に息抜きしてくださいね。
2階のこども図書館は、面積で1階フロアの1/5くらいかもっと狭いくらいかな。と言っても、1階がとにかく広いので、その1/5程度といっても充分広いです。北区中央図書館は、1階入口入って右側の一帯が赤レンガ倉庫を利用した部分になっているのですが、その部分の2階がこども図書館になっているんですよね。1階カウンター前の広いスペースから2階を見上げると、赤レンガの窓の上にこども図書館が乗っかっている感じで面白いんです。こども図書館の窓から見下ろす1階の様子も、広々としていて明るくて、とてもいい気分です。
北区中央図書館では、親御さんがお子さんを連れて本を選ぶために、ベビーカーの後部に本を入れられるカゴをつけたようなカートが用意されています。館内用の乳母車やブックカートを貸し出してくれる図書館はよくありますが、乳母車とブックカートのドッキングは初めて見ました。ブックカートのみのタイプのものも、乳母車とドッキングしているタイプのものも、1階の図書館エリアに入ってすぐ右(返却カウンターの対面)にたくさん置いてありますよ。
こども図書館内に別室のような形で、おはなしの部屋と子育て情報支援室があります。子育て情報支援室は、おもに赤ちゃんとその親御さんのための施設かな。この部屋の一画に授乳やおむつ交換ができるところがあるし、壁には木のおもちゃがずらりと並んでいて、1人1点貸出ができます。
3階はホールや区民活動コーナーなどの施設なので、図書館施設というよりは図書館を中心にした文化活動をできるフロアといったところでしょうか。何も開催されていないようなときにふらっと立ち寄っても、何も見るものはない感じです(笑)。ただ、夏休み期間には3階の一部屋を中高生専用席として開放していますので、中高生の方はぜひ利用してくださいね。1階のカウンターに申し込んで利用する仕組みになっています。
このように設備が充実しているので、普通に読書をしたりするだけではもったいない気がしてしまいますね。新しいサービスを追うだけでなく、これまでの歴史も大事にした図書館なので、せっかくですからそれを存分に使いたいものです。この温故知新図書館、遠方からでも訪れる価値ありですよ!

中央図書館

