中央図書館
渋谷区立中央図書館 訪問記
渋谷区立中央図書館は、2010年5月22日に移転オープンした、渋谷区の中央館。原宿という賑やかな場所にあるので、人込みの中を歩いて図書館に辿り着けたときは、ホッとします(笑)。渋谷区立図書館では唯一、ネット閲覧PCを設置している図書館で、オンラインデータベースも各種利用できます。
渋谷区中央図書館は、JR原宿駅か東京メトロ明治神宮前駅から徒歩9分。原宿駅から行く場合は、竹下口を出て、目の前の横断歩道で道路の反対側にわたってから、左に進みます。「原宿外苑中学校西交差点」で大きい道なりに沿って斜め右に進み、しばらくいくと「原宿外苑中学校」が右に現れます。「原宿外苑中学校」を越えたところで右折し、下り坂をくだっていくと、左側に渋谷区立中央図書館があります。
明治神宮前駅から行く場合は、5番出口から出口の向きと逆方向に歩いて、「神宮前交差点」で左折。「ラフォーレ原宿」前を通る形で明治通りを進みます。しばらく行くと左に「原宿警察署」が見えるので、その手前の道を左折、一本道がカーブした先に渋谷区立中央図書館があります。
ただ、明治神宮前駅、特に千代田線の明治神宮前駅から休日に行く場合、人込みが嫌いな人は、あえて2,3番から出て、JR竹下口の方を経由するルートの方がいいかもしれません。だって、休日の「神宮前交差点」近辺の混雑と言ったら、もうすごいですから(笑)! 逆にショッピング好きな人は、図書館訪問と表参道ショッピングの両方ができていいですね。中央図書館にはコインロッカーがあるので、館内で荷物を持ち歩きたくないときには、預けることができますよ。
渋谷区立中央図書館は、5階建て。1階が総合カウンター・自動貸出機・児童コーナー・喫茶休憩コーナー、2階が新聞・雑誌コーナーと展示室・レファレンスコーナー。辞典・事典類や対面朗読室、カセット展示図書室も、2階です。その上は、3,4階が一般書架で、5階が集会室や会議室です。
この建物は2010年5月22日に移転オープンした建物で、それ以前はここよりほんの少し西にある建物を使っていました。現中央図書館の前に立ち、図書館に背中を向けて高台の上を見上げると、藍色の建物が見えると思います。それが移転前の旧中央図書館です。
旧中央図書館は変な形に分かれた部屋と書庫をフルに使って資料を所蔵していて、何がどこにあるかわかりにくい点もあったのですが、新しい中央図書館は長方形のシンプルな建物。複雑だからこその面白さはなくなりましたが、初めて来た人にもわかりやすい、すっきりした図書館です。
1階の入口を入って右の一帯が児童コーナー。総合カウンター付近から児童コーナーに入ると、手前右に児童雑誌コーナー、右の窓際に沿って絵本の並ぶ靴脱ぎスペースがあります。中央から左にかけては、児童書架が並んでいます。
児童雑誌コーナーには、雑誌『鉄道ファン』も置いてあります。墨田区あずま図書館もそうなのですが、稀に鉄道雑誌を児童雑誌の場所に置く図書館ってあるんですよね。渋谷区立中央図書館で『鉄道ファン』を読みたい大人の方は、2階の雑誌コーナーに行ってもありませんので、注意してください。
窓際の靴脱ぎコーナーは、パンフレット曰く「ひょうたん型」の、曲線からなるコーナー。この靴脱ぎコーナー、床暖房完備だそうです。一番奥の1/4円状のエリアは、仕切りで囲えばおはなし会の会場になります。このエリアは一部障子になっており、日本の昔話のおはなし会なんかも合いそうです。
渋谷区中央図書館は、移転前から英語の絵本や児童書の冊数が多いんですよね。数個の棚を並べて列を成している書棚面のうち、英語絵本と英語児童書でそれぞれおよそ1面分を占めています。
1階入口を入った左奥には、喫茶・休憩スペースがあります。販売カウンターで飲み物や菓子類を注文することもできるし、お弁当などを持ち込むことも可能。私が覗いたときには販売カウンターはもう閉じていたのですが、職員さんに聞いたところ、このカウンターで売るのは、「食事」といえるほどの量のものではないとのこと。それなりにお腹を満たしたい人は、自分で食べものを持ち込んだ方がいいようです。
この販売カウンターの営業については、まだ決まっていないことも多いようで、営業時間も売り切れたら店じまいといった様子。この辺は、これからルールが決まるだろうとの話でした。この喫茶・休憩スペース自体は、販売カウンターが店じまいしても利用できますよ。飲料の自動販売機もあるので、飲みものだけなら、中央図書館が開館している限り、いつでも買えます。
休憩スペースにはテラスもあり、天気がよければ、屋外でも飲食・休憩ができます。目の前の高台の上が原宿外苑中学の校庭なので、時間帯によっては部活動の様子が聞こえたりします。
2階の階段・エレベーターからみて手前右の一画が展示コーナー。ケースに入れて、展示品に手を触れられないタイプの、貴重資料も展示できるコーナーです。2010年5月22日のオープン当日は、渋谷区に在住していた文芸評論家、故・奥野健男氏の展示を行っていましたが、常設展示なのか、適度にテーマを入れ替えるのか不明。渋谷区に関連する展示テーマはいろいろ思いつきそうだし、個人的には定期的に入れ替えてくれたら嬉しいです。
通路を挟んで展示コーナー対面の区画は、新聞・雑誌コーナー。雑誌は上段に最新号を面陳し、下段にバックナンバーを収納するタイプの棚です。新聞と雑誌が一緒で、机席が4席というのは、ちょっと少ない気がしますね。新聞を広げて読みたくても、椅子席しか空いていないことがあるかもしれません。
2階の通路を奥へ進むと、突き当たりにレファレンスコーナーがあります。レファレンスカウンターの前には、コピーやパソコンがずらり。パソコンは全部で7台あり、5台がネット閲覧PC、2台がデータベース閲覧PCです。データベースは、「ヨミダス歴史館」「聞蔵Ⅱビジュアル」「ブリタニカ・オンライン・ジャパン」「Japan Knowledge」が利用可能で、2010年6月くらいから「東洋経済デジタルコンテンツ・ライブラリー」も利用可能になる予定だそうです。2台両方でこれら全てが使用できるのではなく、それぞれ使用できるデータベースが違うので、申し込む際に確認してください。
パソコンが並んだ裏には、カウンターに申し込んで利用するしくみのパソコン利用席があり、持参したパソコンを使用できます。持参パソコンは4階でも使用できますが、そちらは電源がありません。2階のパソコン利用席では電源も使用できます。4階で持参パソコンを使っていて、バッテリーが怪しくなったら、2階に移動して引き続き使用することもできますね。
レファレンスコーナーから右に折り返した一帯は参考室で、辞典・事典類がずらっと並んでいます。中央図書館で、一番人が少なく、静かな区画でもあります(笑)。私自身もついついネット検索を多用して、辞典類を開くことが少なくなっていますが、両方の良さをうまく活用すれば調べた内容ももっと深いものになるはず。活用法を身につけたいところです。
一般書架は3階と4階に分かれています。日本十進分類法の00-から58-までが4階、59-から99-が3階というシンプルな分け方。その他、小説と文庫本は3階の一番奥、中高生コーナーと地域資料は3階の手前左に、英語の図書と旅行ガイドは4階手前左にあります。
この新しい中央図書館は、配布しているパンフレットに「所蔵資料(所蔵規模)34万冊」とありますが、「34万冊の収納が可能な設備を用意した」というだけで、現時点で実際に34万冊所蔵しているわけではありません。オープン時の実際の所蔵数を職員さんに聞いてみたところ、閉架も含めて約25万冊とおっしゃっていました。「現在の所蔵資料が34万冊である」と解釈されやすい「所蔵資料(所蔵規模)34万冊」という表現は、あまりよくないですね。所蔵可能数と所蔵実数が異なる数字なら、分けて書くべきです。
まあ、言うなれば、過大な表現や誘導的な表現を見抜いて、資料を正しく読み解くことは、どの資料であっても重要なこと。利用者としては、このパンフレットも一つの例として、全ての資料に対して、正しく読み取る姿勢を心掛けたいものです。
書棚を細かく見ていくと、地域資料は、渋谷区の資料をはじめ、東京都や渋谷区以外の区の資料も揃っていますね。雑誌『散歩の達人』『Hanako』『Oz magazine』の渋谷区の街をとりあげた号のバックナンバーもありますよ。掲載された店や施設には、今はない施設の情報もあり、渋谷区内の街の変わりやすさを感じます。この中央図書館のある原宿・表参道周辺も、本当に変わりましたもんね。
3階の階段を上がって左手前には「ファッションコーナー」があります。立て掛けてある看板に「人気のファッション関連資料を集めてみました」とあるので、人気があるような新しい資料が多く揃えているかと思いきや、結構古い本が多く、ちょっと拍子抜けしました(笑)。
この新中央図書館、「ファッションコーナー」に限らず、どの書棚でも古い本の割合が高いんです。新しい本だけが並ぶのではなく、新旧の本が揃っているのは、新刊書店ではあまり味わえない図書館の良さですが、棚を見ていると、かなり劣化していて、「資料保存という点では、閉架で管理した方がいいのでは」と思える本も、開架に並んでいます。
これ、穿った見方かもしれませんが、蔵書量を多く感じられるように、ほとんどの本を開架に置いているのでは、と思っています。上にあげたように、中央図書館の蔵書可能規模は34万冊で、実際の蔵書数は25万冊。収蔵能力に対して7割程度の蔵書数にしては、開架の棚は結構埋まっているんです。で、中央図書館のパンフレットによると、収蔵能力34万冊の内訳は、開架24万冊、閉架10万冊なんですね。見えない閉架を減らして、ほとんど開架に入れてしまえば、蔵書数が多い印象を与えることができ、所蔵規模と蔵書実数に差があることは、ますます気付かれにくくなる…。
開架にいろんな本を置くこと自体はいいことだと思います。古い本を読めば、時代とともに重要視されなくなったようなことなど、新しい本だけではわからないことがいろいろわかります。ただ、開架に出すことを重視して、本の劣化を保護する基準を下げているのではないかと、ちょっと心配になります。
4階の外国語図書は、英語の資料が多数あります。日本について英語で書かれた本は「YJ」、英米で発行された原書は「YF」で分類されており、日本の小説を英訳したものは「YJ」、英米文学の原書は「YF」と分かれるんですね。これらの二つは、「英語で書かれた小説」ということで一緒の分類にされたり、別々に分類しても並べて置かれることが多く、明確に分けて置かれるのは、区立図書館では珍しいです。語学の勉強として、英語で書かれた小説を読む場合、英文和訳の勉強か、和文英訳の勉強かで選ぶ本も変わってくると思うのですが、そうしたときにこのように分かれて置いてくれると選びやすいですね。
3,4階の西側にある閲覧席は、渋谷区民だけが利用できる指定席の「区民席」、利用者カードを持つ人が利用できる指定席の「キャレル席」、誰でも利用できる「自由席」があります。指定席はいずれも1階総合カウンターに申し込んでの利用になります。これ以外にも書架内や東側の壁沿いにも席があり、私が数えたところでは、大人用の椅子席と机席を合わせて255席。意外にも、293席あった旧中央図書館より座席数は減っているんですね。
座席の種類に関わらず、3階の座席では持参パソコンの使用は不可。4階の座席では、書架内のテーブルを除く机席(=1人分ごとに仕切りがある机)で、持参パソコンの利用が可能です。電源はないので、家でしっかり充電してきてください。
4階のお手洗い向かって右には渋谷区の教育センターの部屋があります。教育センターの業務のうち、調査研究部と教育相談部を、この中央図書館内の施設で行うようですね。渋谷区公式ホームページによると、
「図書館に行く」感覚で相談が受けられるように、新中央図書館で教育相談を実施します。との理由から、中央図書館に移転したようなので、渋谷区民の方はぜひ利用してみてはいかがでしょうか(但し、新中央図書館での教育相談は、平成22年6月から実施)。また、調査研究部では、新中央図書館の施設や蔵書を活用して、教員へのレファレンス機能を高めるとのことなので、渋谷区立の学校に通うお子さんは、この施設の恩恵を受けることになるかもしれませんね。
教育センターの部屋は、平日の10:00~18:00までしか開いていませんが、部屋の入口の右にある棚には、教育用図書と教科書が並んでいます。私のように、学校を卒業してから何年もたち、子どももいないとなると、教科書なんて見ることがないので、たまにこうして図書館で手に取ると、自分達の時代との差を感じます(笑)。
ここ数年、東京23区では、区立図書館の中央館の移設が続いているんです。一番最近では、2009年10月17日に移設した葛飾区立中央図書館、その前が2008年6月28日の北区立中央図書館、2007年7月16日の豊島区立中央図書館、2007年5月7日の千代田図書館、といった具合。
これらの図書館は、移設にあたって、単なる設備や規模の拡充だけでなく、中央図書館やそれを中心とした区立図書館全体のあり方を考えた上で、新しいコンセプトを打ち出したり、地域の特徴を活かした新中央図書館を作っているんです。
葛飾区立中央図書館は、自動返却機や利用者自ら自分の予約資料を棚から取る「予約資料コーナー」などの目新しい設備を導入しつつ、区民も参加した地域資料の収集・整理を行っている。北区立中央図書館は区内の歴史的建造物を利用した建物で、長時間滞在しやすい設備を充実させている。豊島区立中央図書館は、落語・トキワ荘関連・池袋モンパルナスなど、豊島区に関連する文化芸術の資料を充実させている。千代田図書館は神田古書店連盟との連携展示・出張古書店コーナーを設けたり、「コンシェルジュ」という地域の案内をしてくれる係員を置いてます(この「コンシェルジュ」は、個人的には図書館には要らないと思っていますが 笑)。
それらの特徴ある中央図書館に比べると、この渋谷区立中央図書館は、ただ設備と規模を拡充したのみ、という印象で、「この図書館ならでは」という特徴を感じないんです。行政のコストが厳しく問われるこの時代ですので、余計なことはしないというのも一つの道かもしれませんが、そうそう頻繁には行わない「中央館の移設」という機会を、無難に行ってしまった感じがします。それとも私が、渋谷区立中央図書館に込められた思いを読み取れていないのでしょうか。
渋谷区内で考えても、学校図書館と公共図書館を一体的に運営している臨川みんなの図書館、Twitterで館内の様子などを伝えてくれる代々木図書館、「美術館図録コーナー」を設けた西原図書館など、2006年以降に新設・リニューアルされた、中央図書館以外の図書館の方がよほど特徴がある気がします。渋谷区立図書館は、親分の中央図書館は地味に図書館の基本業務を充実させて、地域館に個性を持たせる方針なのかなあ(笑)。
でも、建物の構造は無理だけど、中の設備はこれからいくらでも変えられますよね。旧中央図書館のように、変にいろいろ区切られていない、シンプルな構造なので、新しくコーナーを作るのも比較的容易でしょう。また、大きく広げた収納可能量を満たしていくのに、どういう資料を重点的に収集するかなど、今後の活動で渋谷区立中央図書館ならではの特徴を生み出す余地は、まだまだあると思います。
中央図書館の建物入口の手前左には、開いた本の上に亀とうさぎが乗っている像があり、「絶えざる歩み、うさぎに優る」という言葉が掲げられています。ぜひとも、その言葉のように、絶えざる歩みで、他の区の中央図書館に優る図書館へと発展して欲しいです。
