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目黒区立八雲中央図書館

目黒区立八雲中央図書館 訪問記

last visit:2014/10/07

目黒区立八雲中央図書館は、都立大学跡地に建てられた、目黒区立図書館の中央館。とても広いワンフロアの施設で、資料も充実。「本がたくさんある空間」が実感できる図書館です。

§ 図書館の場所

八雲中央図書館は東急東横線の都立大学駅から徒歩8分ほどの場所にあります。歳を重ねた人には以前都立大学があった場所と言うと思い当たるかもしれません。そう、都立大学駅は大学が駅名になっているものの、キャンパスは南大沢に移転し、更に東京都立大学を含めた都立の4大学が統合して首都大学東京になってしまい、キャンパスも大学自体も今は存在しない状態。裏を返せば、既になくなってしまった歴史が駅名として残っているとも言えます。

都立大学があった広大な敷地は、現在「めぐろ区民キャンパス」となっており、公園の中に八雲中央図書館・めぐろパーシモンホール・八雲体育館の併設施設が建っているほか、区民斎場や都営住宅などもあります。都立大学駅方面から行くと、広がる芝生の先に複合施設が建っている配置になっており、図書館までの散歩道を歩くのも気持ちいいです。

§ 図書館内の様子

ホールや体育館と一緒の複合施設のうち、地下1階が八雲中央図書館です。この広いワンフロアからなる図書館は、2009年10月に葛飾区中央図書館(5077㎡)が開設されるまでは、23区内のワンフロアの図書館で一番広い図書館でした(八雲中央図書館は3020㎡)。現時点でも、中央館(=当然、広い)でワンフロアの図書館は、23区内ではこの2館だけ。たくさんの資料がワンフロアに広がっている様子は圧巻です!

広すぎる区画なのでざっくりとした説明になってしまいますが、図書館エリアへ入ると、左にカウンターがあり、右先に広大な一般書架。カウンター向かって右の仕切りに囲まれた一画が児童エリアで、カウンターと児童エリアの間の通路を進むと、CDコーナーと中高生コーナーがあります。また、カウンター向かって左の通路を進むと、地域資料などが高い書棚に積まれた「公開書庫」の部屋があり、この部屋では持参PCが使えます。

地下にある図書館というと暗い空間をイメージする人もいるかもしれませんが、図書館エリア手前は地下から1階まで吹き抜けのロビーですし、建物外側にもサンクンガーデン(地下庭園)があるので開放的。とても居心地のいい空間です。

§ 一般書架

一般書架はとにかく広いので、読みたいジャンルが決まっている場合は、無暗にさ迷い歩くより棚の場所を配置図で確認してから棚へ向かうのといいです。中規模の図書館なら目当ての本を探しながらそれまでの道のりで本との出会いを楽しむのもありですが、これだけ大きい書架だと目当ての本に辿りつく前に歩き疲れてしまいそうですし(笑)。書架の大部分は分類記号(3桁の数字)の順にならんでいますが、家事関連本、旅行ガイドなど利用が多いものは数字の並びとは別の場所にあるし、パソコン全般は「007」、インターネット関連は「547」と分類が分かれてしまうパソコン関連本を近くに置いていたりするので、要注意です。

もう一つ注意すべきは雑誌の配置で、雑誌は全てまとめて1箇所に置くという配置ではなく、ジャンルによって数か所に分けて置かれています。大部分の雑誌は図書館エリア入口入って右手前の目立つ場所にありますが、パソコン関連と語学関連はパソコン関連本の棚の裏側(棚番号10番)、料理・健康・旅行・ペットなどの生活情報誌と女性誌は図書館エリア入口からみて左奥窓際、外国語雑誌は外国語図書の棚(53番)、中高生向け雑誌はカウンター向かって右先の中高生コーナー内、児童向け雑誌は児童エリア入口手前右と、雑誌が館内に点在しているかたちです。あちこちにある雑誌棚を歩き回らずにどんな雑誌を所蔵しているか知りたい場合は、各雑誌ラックに目黒区立図書館での所蔵雑誌一覧のファイルがあるので、そちらをどうぞ。同じ表は検索機からも見ることができます。

また、目黒区立図書館は「この本は八雲中央図書館の資料、この本は洗足図書館の資料」といったように所蔵館を決める蔵書管理ではなく、返却された館の棚に戻すような管理方法をしており、雑誌のバックナンバーにもそれが適用されます。だから、貸出される前の雑誌最新号が八雲中央図書館にあるからといって、そのバックナンバーも八雲中央図書館にあるとは限りません。裏を返すと、八雲中央図書館では最新号を置いていない雑誌バックナンバーが棚にあるということにもなります。わかりにくい仕組みでもありますが、いつも同じ館を利用していても、他の利用者の予約&返却によって棚の中身が変化していろんな本・雑誌に出会える仕組みでもあるので、上手に活用したいです。

日本の小説・エッセイは一緒にして、頭文字ごとに、まず主要な著者の本を姓名五十音順に著者名見出しをつけて並べて、その後にその他の著者の本をひとまとめにしています。たとえば、小説・エッセイの「ゆ」のところをみると、「唯川恵」「柳美里」「結城五郎」「結城昌治」「夢枕獏」「由良三郎」「ゆ」と見出しが並び、見出しがある6名以外で頭文字が“ゆ”の著者は最後の「ゆ」に順不同で並んでいます。複数の作家による作品集は、上記頭文字による並びの「わ」の後に「918」という分類でまとめられており、「時代小説」「推理小説」「エッセイ」「その他」とジャンルによって分かれています。また、外国の小説は、「中国小説」「英米小説」「ドイツ小説」といったかたちで国・地域別に分けたうえで、日本の小説と同様に頭文字ごとに主要作家→その他と並んでいます。

書架を回っていると、蔵書数が多くて、同じ分類記号の本も多いがための苦しい工夫も見受けられます。たとえば、「338.1 証券・株式取引」の棚は4桁分類でもなお冊数が多いので、338.1の中で更に出版社頭文字で分類しています。が、出版社別にしたことが探しやすくなっているかは微妙。名の知られている株式アナリストなどもいますし、著者五十音順の方がわかりやすいのではという気もします。

一般書架エリアのうち児童コーナーに隣接している辺りには漫画も多数あり、「講談社コミックス」「アフタヌーンコミックス」といったようにコミックスシリーズで分類されています。書棚にある漫画は本と同様に1冊単位で借りるかたちですが、それとは別に複数巻単位で借りられる漫画セットがあり、ダミーカードで管理しています。たとえば、漫画の棚にある「花より男子 1~15」というダミーカードをカウンターに持っていくと、『花より男子』の1巻から15巻までのセットを貸出冊数1冊として借りられるというわけです。また、中国語やハングルに訳された漫画もあるので、それらの言語が読める人はもちろん、日本でお馴染みの漫画が中国語に訳されたらどんな漢字で表されるのか見てみるのも面白いです。

一般書架のうち「767 ポピュラー音楽・楽譜」は、児童コーナーを挟んで一般書架とは反対側のCDコーナーにあるので注意が必要です。中高生コーナーとCDコーナーだけがぽつんと離れたところにあり、CDや音楽本を借りたいだけなのに中高生が集まる空間に入るのがちょっと気が引けますが(笑)、遠慮せずに入りましょう。この中高生コーナー、放課後に行くと席が埋まっていることが多く、空間に対して机が多いので棚が見づらいくらいです。中高生の皆さん、八雲中央図書館で中高生コーナーの本棚を見たいときには、ちょっとずうずうしく本棚前の隙間に入ってください(笑)。

§ 目黒ならではの資料・展示・備品

館内を回っていると何故ここに?と目を留めてしまうのが、奥の窓際にあるSLの模型。説明によると、日本工業大学付属東京工業高等学校、現在の日本工業大学駒場高等学校の機械科の生徒さんが実習として作った1/10サイズのSL9600型だそうで、なかなか立派な模型です。展示場所が旅行ガイドの棚そばなので、八雲中央図書館の旅行ガイドの棚を物色しながら旅行の予定を立てたら、サブリミナル効果でSLの旅に行きたくなってしまうかも(笑)。

目黒区のならではの資料としては、入口入って右側壁沿いの地域資料コーナーも充実。雑誌「Hanako」「散歩の達人」などで自由が丘が特集された号もあれば、東急電鉄を取り上げた鉄道本などもあり、目黒の幅広さを感じます。目黒区美術館の過去の展示の図録も揃っています。

この地域資料の棚向かって左の柱に貼られている「大正14年頃の目黒・世田谷商店地図」も面白いです。呉服屋・醤油店などの今はない(きちんと調べてないけど、今はないでしょう。醤油で一つの店を構えられたなんて隔世の感あり)店の写真も面白いですが、背景となっている古地図に私は見入ってしまいます。今はない目黒競馬場があったり、東京大学駒場キャンパス辺りか、筑波大学附属駒場中学・高校や都立駒場高校がある辺りと思われる場所に練兵場があったり、「こんなところにこんなものがあったのか」という発見が楽しめます。

そうそう、目黒に関する資料の棚手前の閲覧席のうち、雑誌コーナーに近い辺りのテーブルは、サンマ3匹が三角形をつくるように繋がっているかたちのデザインなんです。「目黒のさんま」は落語で有名で、目黒区立図書館カードにもさんまのイラストが描かれています。八雲中央図書館に来た際には、八雲中央名物さんまテーブルもぜひご賞味ください(笑)。

§ 児童コーナー

カウンター向かって右にある児童コーナーは、透明な仕切りで囲われた空間で、開放感がありながらも音を防いでくれます。でも、よく見ると、一般書架側はしっかり区切られているものの、中高生コーナー・CDコーナー側は上が開いていて、完全に閉じられた空間ではありません。読み聞かせ程度なら大丈夫ですが、お子さんが大騒ぎすることはないようご注意ください。靴脱ぎスペースはありませんが、絵本の棚の付近に大きなソファがあるので、そのあたりで読み聞かせもできます。そばには船の形の棚もあり、ぬいぐるみがたくさん置いてあるので、まるでぬいぐるみたちが船の旅に出ているよう。

絵本は、日本のおはなしも外国のおはなしも一緒にして、タイトルの頭文字で分類しています。同じ頭文字の中での並びは、本のサイズが小さいものから大きいものへと並べていますが、冊数が多い頭文字では、小サイズから大サイズへと一律に並べるのではなく、一つの頭文字の中に小サイズから大サイズへという山がいくつかできています。おそらく、絵本が棚の中で安定するようにするためですが、検索機で本の大きさを調べても探す場所を「ここ」と一箇所に特定できないという点では少し不便な面があります。お探しの本が見当たらなかったら、遠慮なく職員さんに聞いてみましょう。

児童読み物も、絵本と同様に、日本人作家の作品も外国人作家の作品も一緒にして、タイトルの頭文字で分類しています。同じ頭文字内での並び順が小サイズから大きいサイズへとなっているところも絵本と同様です。

児童コーナーは冷静に考えると小さいわけではないのですが、一般書架が広大であるがために、やや狭い印象を受けてしまいます。実際、目黒区立図書館で2番目に蔵書が多い緑が丘図書館に比べて、八雲中央図書館の蔵書数は3倍近くあるのに、児童書の冊数だけを見ると緑が丘図書館の方が多いんです。でも、八雲中央図書館の児童サービスが弱いというよりは、おそらく、児童書に関しては中央館・地域館でそれほど差をつけず同等にしている。対して、一般書架は中央館に集中して管理しているという説明が適切だと思います。

§ 公開書庫

カウンター向かって左の通路を進んだ先は公開書庫。文学全集や新聞縮刷版、年鑑などが、密集して並ぶ書棚にぎっしり詰まっています。『日本競馬史』『CM年鑑』などあらゆるジャンルの資料があるので、何に興味を持っている人もこの公開書庫に行ってみれば「こんな資料が存在するんだ!」という発見があるはず。また、公開書庫の机には4人掛けに対して2つの電源があり、持参PCをご使用の方はこの電源を使ってパソコンを利用することができます。

公開書庫の奥の壁には「台湾日日新報」の影印本がずらっと並んでいます。目黒区でなぜ台湾日日新報?と思うかもしれませんが、目黒区立図書館と台湾日日新報社をつなぐ重要な人物がいるのです。目黒区立図書館の本格的スタートは、1952(昭和27)年に開設された守屋図書館なのですが、当時の建物は台湾日日新報社社長を務めた守屋善兵衛氏の遺族から寄贈された宅地・建物です(開設当時の守屋図書館の様子は、目黒区立八雲中央図書館発行『目黒区の図書館 50年のあゆみ』が詳しいです)。図書館の名前ももちろん守屋氏からとっており、23区内の図書館で唯一人名を冠した図書館となっています。

また、台湾日日新報影印本が並ぶ下には目黒区関連新聞記事の切り抜きファイルもずらり。こちらは1975年からファイリングしているようです。更に、資料として新聞折り込みチラシも収集しており、公開書庫にある中で一番古いものが1988年、新しいものは一般書架の地域資料の右下の棚にあります。しかも、1か月ごとに「商店・商品」「求人」「不動産」「その他」とジャンル分けして整理しています。目黒区内の不動産だと昔のものでも比較的高額だったり、対して電化製品などがあっという間に値が落ちることを実感できたり、モノの値段やチラシデザインの移り変わりなどが見ていて飽きません。

§ 1日中過ごせる図書館

文字を追うのに疲れて一休みしたくなったら、サンクンガーデン(地下庭園)もあります。出入口は児童エリアと一般書架の仕切りのそば、書架で言うと漫画の棚に近いところにサンクンガーデンへのドアがあります。テーブルが3つほどあるので天気がよければ読書もできますし、外の空気を吸えばいいリフレッシュにもなります。

また、クラシックコンサートなどが行われてるホールとの複合施設なので、カフェやレストランといった飲食店も完備しています。なかでも、公園側にある「カフェグリーン」には店内で読める本が何冊かあり、ちょっとしたブックカフェにもなっています。カフェもレストランもアルコールを飲めるお店なので、調べものの後や休日の息抜きに寄りたくなります。

こんなかたちで所蔵資料、設備ともに1日中過ごしても足りないくらいの図書館です。区民の文化の場として生まれ変わった大学跡地、これからもたっぷり活用させていただきます!

目黒区立八雲中央図書館 特集・行事・図書館だより感想記

  八雲中央図書館見学ツアー
―2010年11月15日のイベント
八雲中央図書館で開催された見学ツアーの体験記です。

目黒区立八雲中央図書館 データ

住所東京都目黒区八雲1-1-1 めぐろ区民キャンパス内 →Google Mapで見る
Tel03-5701-2795
資料相談は 03-5701-2743
開館時間
月~土曜9:00~21:00
日曜・祝日、12月28日9:00~17:00
定休日第1月曜(祝休日の場合は開館し、翌日以降直近の平日を休館)
12月29日~1月4日
最寄駅 東急東横線 都立大学駅から徒歩8分
駐輪場建物西側(正面入口向かって左側)と建物北側(正面入口とは反対側)に駐輪場あり
駐車場併設のめぐろパーシモンホールの地下に駐車場あり
所蔵資料
図書所蔵数406,203冊(2017/04/01現在、出典『平成29年度 東京都公立図書館調査』)
音声資料
CDカセットレコード
ありカセットブックのみありなし

映像資料
DVDビデオLD
なしなしなし
※ DVD・ビデオは広報DVD・ビデオを除いた市販ビデオ・DVDの有無を表しています
設備
ブックポスト建物地下1階の図書館エリア入口手前右の壁面にブックポストあり
建物の西側(正面入口向かって左側)にも屋外ブックポストあり(白い巨大な箱の側面に投入口がついています)。
自動貸出機なし
自動返却機なし
セルフ予約受取なし
音声試聴設備なし
映像視聴設備なし
ネット閲覧PCネット閲覧PC4台あり。利用は各時の00分~30分、30分~翌時00分という30分単位で、続けての利用は2回まで。
持参PC利用館内閲覧席での持参PC利用可能。公開書庫のテーブルには電源あり。4席座れる机が4つあり、各机に電源が2つ設置されているので、電源が使えるのは8人まで。
LAN接続入口入って右の雑誌コーナーに、「docomo wifi」「ソフトバンク wifi」のアクセスポイントあり
飲食設備等
  • 図書館エリアでの完全に閉まる容器(ペットボトルなど)からの飲料摂取はOK、それ以外の飲食は不可
  • 地下1階の図書館エリアの外に飲料自販機2台あり
  • 建物1階にレストラン「ベジタブルイタリアン Yakumo」あり。営業時間11:00~22:00、ラストオーダー21:00。
  • 敷地内に喫茶店「グリーンカフェ 八雲」あり。営業時間11:00~18:00、月曜定休。
その他設備
  • 図書館エリア手前にロッカー60個あり(2013/10/24時点で、うち4個が使用不可)
  • 館内用ブックカートあり
  • 建物北側屋外に喫煙所あり